こんにちは、renの松井です。2026年2月、会社の方向性や役員3人の考えをメンバーに届けるための施策として、社内企画「役員ラジオ」を立ち上げました。以来、広報担当メンバーがパーソナリティ、役員たちがゲストという立て付けで、毎月30分程度のラジオを社内に発信しています。
今回は、企画発案者の僕の視点から、企画に至った背景や、実施するなかでの試行錯誤、4か月間続けてみての発見や手応えについて書いてみます。組織づくりに携わる方々にとって、なにか参考になれば嬉しいです。
renの「役員ラジオ」とは
役員ラジオは、現在の会社の方針や取り組みについて、”定期的に温度感のある情報を共有する機会”として誕生した企画。普段は伝えきれない会社の方針・方向性の背景や思い、考えなどを役員3人が語ります
小さな組織でも、見ている方向は少しずつズレていく
2020年に「つながりのデザイン」というコンセプトを掲げて以来、私たちはオフィス移転や事業領域の拡大に取り組んできました。2025年7月1日には「株式会社ren」へと社名変更をおこなうなど、この数年で大小問わずものすごい量の変化を経験しています。その動きは今も絶賛進行中で、毎週のように新しい考えやアイデアが生まれています。
世の中にとってもメンバーにとってもよりよい会社であり続けるために、変化や更新は大切です。でも、そのスピードが速ければ速いほど、リアルタイムに会社の動向をキャッチし行動に落とし込める人と、そこに難しさを感じる人との差は、じわじわ広がっていってしまいます。
現在renは、役員3人・メンバー27人、あわせて30人の小さな組織です。正直に言うと僕は、「どの役員も、日頃から丁寧にコミュニケーションをとってくれているし、renの規模感で見ている方向が散らばってしまうことはあるのだろうか」と思うこともありました。でも、それは大きな勘違いでした。方針や方向性への理解度には、グラデーション状に濃淡がある。renは基本フルリモートワークで、全員がリアルで顔を合わせる機会は月に1回あるかないか。ばらつきが出るのは、むしろ自然です。
メンバー一人ひとりは、現状をよりよくしたいと思っている。なのに、見ている方向がちょっとずつ違うせいで、力を一つに集中させられない。それぞれの力が発揮できないのはもったいない状態です。だから、しっかりつながりをデザインしないとなと思いました。
フルリモートから見える景色は、びっくりするくらい違う
もうひとつ、「役員ラジオ」立案につながる、大きな気づきがありました。
僕はもともと毎日のようにSNAP(オフィス)に出社していて、役員たちと日常的にコミュニケーションを取れる距離にいました。そこでキャッチアップした情報をメンバーに共有していく動きを自然に取ることができていました。
でも今年2月、プライベートの変化を機に、僕自身もほぼフルリモートワークに切り替わりました。対面でのコミュニケーションが激減したことで、「会社の方向性や最新情報をキャッチアップすることは、むちゃくちゃ難しいな」と痛感しました。同時に、「これまで、みんな、よくこのスピード感でキャッチアップしてくれていたな」と驚きました。これまで当たり前だと思っていたことが、実はみんなのタフさと頑張りで成り立っていたんだと、身をもって気づいた瞬間でした。
じゃあ、どうするか。安易にミーティングや共有の場を増やすのは違うと思いました。renのメンバーは、それぞれがクライアント業務を担当しながら、同時に「全員で会社を運営する」というコーポレート業務にも携わっています。プライベートや家庭とのバランスもある。そこに会議を増やすのは、そのままみんなの負担になってしまうと感じたためです。
思いついたのが、社内で小さな遊びとして試したことのあった「ポッドキャスト(音声配信)」でした。音声なら、移動中や作業の合間に、それぞれのタイミングで自由に聴ける。さらに、文章だけではこぼれ落ちてしまう役員陣のニュアンスやトーンまで届けられる。ちょうど同時期に、役員たちからも「自分たちの思いや注力したいポイントが、本当に伝わっているか自信がない」という声があがっていました。両方をつなぐ企画としてラジオはハマるんじゃないかと思い、月1回の「役員ラジオ」が動き出しました。

発見1:役員陣の自然な本音を引き出す。その舵取りの難しさ
初回の収録で最初に気づいたのは、けっこう緊張するということ。
役員とは普段から雑談もたくさんしています。でも、いざ収録が始まると変に力が入ってしまう。加えて、パーソナリティとしての振る舞い方に大いに迷いました。
あからさまに「役員 vs メンバー」の対立構造をつくってプロレス的に盛り上げるのは、renの文化に馴染みません。かといって、役員の言うことにただ「そうですよね」と同調するだけでは、メンバーが本当に聴きたい部分は掘り出せない。
メンバーが今、何を知りたがっているのか、どの内容・どの言葉の解像度を上げたいのかを代弁しながら、役員陣の自然な本音を引き出す。その舵取りの難しさに、最初のうちは、独特の緊張感がありました。
発見2:本音と勇気を持ち寄る、お便りの効果
放送を聴いたメンバーからのリアクションを見える化するため、お便りコーナーを設けたところ、「あの方針のここをもっと詳しく知りたい」「ここに疑問を感じた」といった、生々しくも前向きな質問が寄せられるようになりました。
お便りを送る心理的ハードルをできる限りゼロに近づけたかったので、お便りはペンネーム方式にしました。そのおかげか、届くお便りはどれも素直で、何よりペンネームがいい。「気分は全身柄タイツ」「お〜いお茶の俳句をつい読んじゃう人」「カカオ99%」……見ているだけで、みんながこの場をうまく、楽しく使ってくれているのが伝わってきます。
ただ、匿名だからこそ、気をつけていることもあります。役員も人間です。匿名を盾にして、配慮に欠ける言葉が飛び交うような場になってしまうのは、いちばん避けなくちゃいけない。お便りを出すメンバーにも、そのことを心のどこかに置いておいてほしいと思っています。とはいえ、正直なところ、うちの風土ならそんなことにはならないだろう、という安心感があります。実際、そういうお便りは一度も来ていません。
もちろん、会社の制度に正面から切り込むといった、ちょっとドキッとするようなお便りが届くこともあります。でも、そのどれもが「責める意図はなく、会社と一緒に考えたい」という姿勢で送られてきているのが、ちゃんと伝わってくる。メンバーも、考え抜いたうえで投げかけてくれている。役員も、その問いから逃げずに、勇気をもって受け止め、自分の言葉で答えてくれる。この往復が生まれていること自体が、本当にありがたいなと思います。

発見3:「録って出し」から生まれる、非言語の熱量
編集は、あえてほぼ「録って出し」のライトなものにしています。理由は継続性の担保です。クライアント業務と社内業務を全員で担っているrenでは、ラジオに過度なリソースを割くと継続性がなくなってしまうと考えたからです。でも、続けるうちに、録って出しには別の良さもあると気づきました。
例えば、とある放送回にて「AI時代に、renが培ってきた力をどう発揮するか」という話に展開したとき、代表の山田が10分間ずっと熱く語り続けることがありました。普段そこまで前のめりに思いを語る場面は多くないので、収録中、僕と他の役員たちとで「これはこのまま行こう」とアイコンタクトを交わして、続行しました。言葉に詰まるところもあったけど、熱量を薄めたくなくて、そのまま使いました。
「メンバーに何を伝えたいですか?」という問いに、0秒でバーッと言葉が出てくるときと、1〜2秒の沈黙があってから絞り出されるときとでは、重みが違うと思います。あまりに違和感のある沈黙はさすがにまずいけれど、ちょっと熟考しているくらいの間は、むしろそのまま届けたい。役員たちも、まだ固まりきっていない思いをひとりの人間として探り探り発信している。その手触りごと共有できるのが、録って出しの良さだと気づきました。
発見4:効果は、焦っちゃいけない。諦めもしない。
4回の配信を終えた頃、実態を知りたくなって、メンバーに対して視聴者アンケートを実施しました。
役員ラジオの視聴はマストではありませんが、回答してくれた20人のうち14人が「聴いている」と答えてくれました。その半数以上が「会社の方針の理解に役立っている」と答えてくれて、なかには10段階評価で8〜9をつけてくれた人も。
一方で、「自身や日頃の業務に変化があったか」という項目に対しては10段階評価のうち平均4.5に留まっているし、「作業しながらだと内容が頭に残らない」「進行役も含めて解像度の高いメンバーだけで話しているから、届きづらい回もあるのでは」といったフィードバックも並んでいました。「日常的に消費するコンテンツとして、本とかポッドキャスト、Netflixと並ぶとどうしても選ばない」という素直な回答もあって、「そうか、可処分時間の取り合いだと負けちゃうよな」と内省もしました。
とにもかくにも、まっすぐフィードバックをくれるメンバーと組織風土に感謝です。


アンケートの自由記述の中から、嬉しかった声をちょっと紹介させてください。
- 「資料じゃなく、役員自身の”声”で伝えてくれるので、親しみをもって聴ける」
- 「テキストだと受け取り側の心情に左右されそうだけど、音声のトーンまで拾えるのはいい試み」
- 「イベントの企画やクライアント業務でのアクションを考えるとき、ラジオで聞いた話も参考に優先順位をつけている」
- 「役員が迷いや葛藤のなかで、一歩でも着実に進もうとしている様子が伝わってくる。一人ひとりが誠実に思えて、renへの愛着が増した」
派手ではないけれど、こういう手応えを一つずつ拾っていくしかない。効果は焦らずに積み上げた先に得られるものだ、と再認識する結果でした。
明確な答えがないから、つながりが育まれる
「役員ラジオ」の意図は、会社への関心を無理に引き上げることではありません。
あえて言うなら、「会社についてもっと理解を深めて考えたい!」と思っているメンバーの手助けをするツールになればいいなと思っています。そうして熱量が高まったメンバーが、今度は別のメンバーへと会社の意志を自然に伝えていく。その行動を見た別のメンバーが「そういうことか」と理解する。そんな熱量の広がり方を思い描いています。
だから、この取り組みだけで会社全体に方針や理念が伝わりきるとは、まったく思っていませんし、あくまで補助ツールの位置付けです。会社という身近だけど壮大な存在を理解するために、タッチポイントを一つ増やす取り組みだと捉えています。
もっと言えば、「役員ラジオ」はただ会社のオフィシャルな情報を発信するツールではありません。
役員陣のあいだですら、考えや思いは必ずしも完全には重なっていないこともある。メンバーからしてみたら、聴き終わった後に、すっきりしないことがあるかもしれない。でも僕は、それでいいと思います。
「うーん」と思うからこそ、自分なりに考えたいと思うし誰かと話したいと思う。そう思うと、迷いや揺らぎ、モヤモヤも含めてともにするプロセスこそが、renらしいつながりの源なのかもしれません。今後はパーソナリティを僕以外のメンバーにも交代しながら、より多様な視点で展開していく予定です。「役員ラジオがあってよかった」と思ってくれるメンバーがひとりでも多く生まれたら最高です。
そして、組織づくりは続いていく
前提の話にはなりますが、「役員ラジオ」が機能するためには、日頃の関係性づくりが欠かせません。
関係性ができていない人に良さげなことを言われても、耳を傾けようと思いにくい。会社の方針ならなおさらです。日頃から役員たちとメンバーのコミュニケーションの量を担保することが大切です。
一方、役員たちに対して、経営をしながら実案件にも携わっていることに加えて「社内へ丁寧に方針を伝えて理解を促進するところまで守備範囲です」と背負わせたら、たぶん倒れてしまう。だから気づいたメンバーが、キャッチアップしてつないでいければいいと思います。
renには、掲げた方針や理念を自分なりに解釈して、周りのメンバーと対話しながら形にしていく自由度がものすごくある。会社の方向性と、メンバー一人ひとりの「やりたい」という思いが重なるよう、丁寧なつなぎを意識していきたいです。全員が「大変なことはあるけれど、renで働くのって最高だよね」と心から思える。そんな組織をつくり続けていきます。