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そもそも、飽きるって何だろう
まず飽きるとはどういう状態なのか。心理学では「馴化(じゅんか)」とか「心的飽和」と言ったりするそうです。
馴化とは… 刺激を繰り返し受けることによって、反応が鈍くなっていくこと。大きな花火の音を聞いて、最初は驚くけど、だんだん驚かなくなっていくようなとき起きているもので、慣れるとほぼ同じ意味で使われている言葉です。
心的飽和とは… 刺激を感じられない同じ作業を繰り返しているときに、続ける意志がなくなること。単純作業をしているときに起こりやすい現象です。時間を置けば回復する疲労とは違って、一定の時間を置いても回復しないことがあるため、飽きたら二度とやらないということもありえます。
快感を感じる報酬系は、記憶と連携している
人間は、知らないことやわからないことに触れると脳の「報酬系」という快感を感じるシステムが活性化します。この報酬系というシステムは「記憶」と連携していて、初めての情報に対しては大きく活性化し、すでに知っている情報については、記憶の分が差し引かれて残った分だけ活性化するようになっています。よくわからないと思うので、花火大会を例に図にまとめてみました。
報酬…脳にとってのご褒美のようなもの
だから、何度も繰り返し見ているものや似ているものに対してはあまり快感を感じずに、飽きてしまうのです。 ちなみに、脳のご褒美である「報酬」には、以下のような種類があります。
この「報酬」もいつかは取り上げてみたい面白いテーマなのですが、今回は「飽きる」についてもう少し掘り下げていきたいと思います。なぜ人間は、すでに経験したことに対してあまり快感を感じないようになっているのか。なぜ、元々飽きるようにできているのか。そこにはけっこう「なるほど!」な秘密がありました。
人類は生き残るために飽きてきた
人は飽きると、新しい刺激を求めるようになります。その刺激によって学習し、成長していきます。これを繰り返して、人類は自分たちができることを増やしていき、あらゆる生存競争に勝ってきました。飽きるというと、ネガティブなイメージがありますが、飽きるとは言わば、生き残るために備わっている成長システムとも言えるのです。
人は飽きると、新たな刺激を求めて遊動を始めます。そしてこの遊動の中で、さまざまな環境に適応し、人は成長をしていきます。
この仕組みを顧客の動きに例えるのなら、上の図で円の外に出ることを「ブランドスイッチ」と言います。他社ブランドに顧客が流出することですよね。そしてそのまま、どのブランドも円の中に顧客をとどめることができない場合、顧客はブランドを遊動する「ジプシー」になります。
しかし、これまで書いてきたように、人間は生物的なしくみで、「そちらのほうが都合がいい」ので飽きます。では僕らがいつもしている「飽きさせないための努力」っていったい何なのでしょうか。
同じ世界観の中で新しい刺激をしかけ続ける
人は飽きて、新たな刺激を求めて遊動するようにできている。だったら遊動の「その先」を同じことの中につくってあげればいい。
これは、長く続いていく夫婦生活だったり、会社経営だったり、コミュニティの運営だったり、教育だったり、いろんなことに応用が利く考えです。ポイントは、同じことの中で、新たな刺激を仕掛けていくこと。ブランドの話をさせてもらうならば、しかけていく新しい刺激は、そのブランドの世界観の中で起こるものとして、「納得感のあるもの」でないといけません。
まずは、らしさ(ブランドアイデンティティ)の追求から始めましょう。そして、その中で新しい刺激をどんどんしかけていきましょう。ブランディングの観点で言うと、飽きさせないとは、奇想天外なことをしかけることではありません。「自分らしいこと、自分たちらしいことの中で、どんな挑戦をしていくか」なのです。